扉をあけて~「宇宙を駆けるよだか」感想文~

Netflixオリジナルドラマ「宇宙を駆けるよだか」が配信スタートしました。

当日に一気に見て、うわ~~~!!!という気持ちをTwitterで吐き出していたんですけど、いかんせんこのドラマ、すべてがネタバレ要素を含みますって感じなのでTwitterに感想書くのが難しい。でもこのうわ~~~!!!を忘れないうちに書き残しておきたい未来の自分のために、というわけで困ったときのブログです。原作も読んだので、そちらのネタバレもガンバン含んでいます。未見・未読の方はご注意ください、っていうかこんなブログ読んでる時間あったら今すぐネトフリに登録してドラマを見てほしい。太っ腹すぎるNetflix大先生のご厚意で1か月間無料です!(拙いステマ

 

 

 

 

 

論理的な考察とかできないタイプのオタクなので、思ったことをぐりぐり書きます。

まずはジャニオタ的観点をなるべく外した全体の感想。「人は見た目なのか、中身なのか」という少女漫画(に限らないけど)が昔から繰り返してきた青春の根源的なテーマについて、「明確な答えはない」という結論だったのかなと思いました。というよりこれについて明確な答えを出そうとする人はたぶん創作に向いていない気がする。

これは鶏が先か卵が先かの理論で、美人の歩いてきた人生と不美人が歩いてきた人生は絶対全く違うもので、その中で不美人だけどまっすぐ育っている人もいるだろうけど、それは両親だったり友人だったりに恵まれているからであって、海根さんと同じ人生をあゆみが歩んでいたら今のあゆみには絶対ならないのは想像に難くない。同時に美人なら全員あゆみのように育つのかといえばそんなことはなくて、美人には美人の言い分があるだろうと全く美人ではないわたしも思います。

とは言っても現実は不美人にはかなり厳しい。わたしは就活のときにすごく感じました。超個人的な話ですけど、わたしは最後の就職氷河期世代で、私立文系都内に実家がない女子大学生はま~大変でした。そしてあまりにも大変で痩せたんですよね。スーツの号数をかなり落とすくらい痩せました。同居してた妹は「コイツやべえな…」と思って実家に相談したようです。でもその頃から急に面接に通るようになったんですよね。因果関係なんて証明のしようがないし、単にわたしが面接に慣れただけかもしれないけど、忙しさとストレスで細くなったウエストとすっきりした輪郭を鏡で見ながら「見た目って大事なんだな…」とぼんやり思ったのをよく覚えています。学歴も志望理由もその他のスペックも変わらないのに評価が変わるということを大学4年生にして知りました。遅いぞ!と当時の自分に教えてあげたい…

自分で言うのもアレですけど、わたしは美人ではないけど、海根さんほど不美人でもない。彼氏もいたし、すれ違いざまに「ブス!」と言われたこともない。たぶんよだかを見た女の子のほとんどがそうじゃないかと思う。でも海根さんの気持ちはすごくわかった。いやわかったと言うのは失礼なのかもしれないけど、少なくともあゆみよりは海根さんに共感する部分が多かった。それは、直接は言われないけど無意識に感じる男性からの評価であったり、周りの美人な友人を見て「うらやましいな」と思う感覚であったり、まあそういうことです。

あと、わたしが原作を読んで思い浮かんだのが東村アキコ先生の「主に泣いてます」でした。これは超絶美人の主人公が美人であるがゆえにめちゃくちゃ苦労するギャグ寄りの漫画なんですけど(中丸くんでドラマ化してる)、結末がすごくて、普通の世界で生きていくのは無理だと思った主人公は無人島に行って自給自足をして、彼女を慕う年下の男の子が会いに行くと、そこには真っ黒に日焼けしてかつての美貌を失ったかわりにはつらつとした笑顔を見せる主人公がいた、っていう希望があるんだかないんだかっていう。東村先生はあとがきで「美人には、美人であることを使って輝くタイプと、美人であるがゆえに不幸になるタイプがいる」と書いていて、極端な話ではあるんですけど、納得いく部分もかなりありました。

だから何だと言われると困るんですけど、要するによだかの主題テーマに答えは永遠に出ないと思う、という話です。見た目より中身が大事なときもあるし、その逆も絶対にある。本当は中身だけが評価されるのが正しい世界なのかもしれないけど、それを信じるには根拠がなさすぎる。だってわたしも(わたしたちも)アイドルを好きになるときに少なからず見た目を見ている。中身なんて全然知らないのに「かっこいいな」と思って好意的な感情を抱く。このテーマの作品に超アイドルのジャニーズから神山くんと重岡くんが出たことの意味みたいなものに思いを馳せました。

たぶん彼らは普通の一般男性よりもこの「見た目か中身か」というテーマについて深く考えたことがあるはず。もちろん作中で海根さんが言った『見た目の綺麗なあんたたちにはわからない』というのも真理で、神山くんも重岡くんも、本当の意味で海根然子の絶望を理解する日は来ないと思う。でも、他人の美醜の感覚にジャッジされ続けることのつらさ、のようなものはわたしたち一般人よりもよくわかっているのかなとも思う。だからよだかのインタビューで繰り返されていた質問「見た目と中身どっちが大事だと思う?」の答えが二人とも「中身」だったことを忘れずにいたい。ただの優等生的回答ではないと思いたい。…重いオタクでごめんな~ていうかジャニオタ的視点を外すとか言っといて結論がジャニオタですまん~

 

そしてここからは個別の気になったポイントを。通しで見たのは一回だけなので記憶違いがあったらすみません。気づいたら都度修正します。

 

まずは「しろちゃんの嘘はどこからどこまで?」について。

これTwitterにも「神山くんの演技が上手すぎてひとつわからなかったことがある」と書いたんだけど、ドラマ見ただけだと本当によくわからなかったんですよね。あゆみのために然子を騙して入れ替わりを受け入れたふりをする、というのはその通り受け止めたんですけど、問題は火賀くんへの嫉妬心の部分です。原作を読んだ感じだと、その嫉妬心も含めて嘘であるという解釈だったように感じたんですけど、ドラマ版だと明らかにしろちゃんは火賀に対する鬱屈した気持ちを持っている、という演出がされていたように感じたし、神山くんもわりとそこをポイントにして演技しているように感じた。単に物語を盛り上げるためのミスリードなのかもしれないけど、私的にはここが一番原作との違いというかテイストの分かれ目になった気がして印象に残る部分でした。原作だと結構最初のほうでしろちゃんはあゆみの味方であるということがわかりやすく表現されてるけど、ドラマ版は結構終盤まで確信が持てないつくりだったような気がしたので。でもこれはわたしがジャニオタであり、ド新規なので偉そうなことは言えないけど”かみしげ”という元シンメがこれまで歩んできた歴史を多少なりとも知っているのでフィルターがかかっているだけな気もする…

でももしこれが監督の思惑なんだとしたら、それは男性の視点を入れたことによる解釈なのかなと思いました。原作だと火賀くんはもちろん、しろちゃんはまじで聖人君子のようなある意味完璧な男の子だけど、男だって嫉妬はするよ、女の子とは違う発露ではあるけど、というメッセージなのかなという深読み。全然違ったらすみません!土下座!

 

その流れで次は「火賀くんのあゆみに対する気持ちの結末」について。

これはわたしが重岡くんを好きだからなんですけど、最終話で火賀くんがあゆみに振られた(というか自ら振られにいった)あと、学校で然子を見て、あゆみの中身の然子と楽しく過ごした一瞬の夢のような時間を回想して泣くという、全世界が火賀くんを好きになった瞬間だったわけですけど、原作読んでびっくりですよ。これオリジナルだったんだもんな!正確には然子を見て複雑な表情を浮かべるシーンはあるんだけど、回想シーンはドラマ版のみ。でもこれが入ったことで、火賀くんは完璧ではない普通の男の子であると同時に、火賀くんは然子の姿のあゆみのことが本当に好きだったんだと視聴者が思い知らされる場面でもありました。オタク補正だと笑ってもらって構わないですけど、あの回想と涙があるのとないのとじゃあ全然余韻が違う気がする。

中盤、しろちゃんが火賀くんを挑発する場面の「入れ替わったことで一番得をしたのはお前だろ?」の伏線も上手く回収されていて、すげ~~~と思いました。あとさっきの話題に戻るけど、どう考えてもこのセリフはしろちゃんの本心を多少なりとも含んでいる気がするからやっぱ全部嘘じゃないんじゃない???教えてしろちゃん!

 

大きく気になったのは以上2点です。細かいところでは、女優ふたりの演技力がとにかくすごいとか、かみしげは自分たちのミッションをよく理解してるなあとか、ネトフリの予算の潤沢さに目を見張ったこととか、重岡くんがまじでかっこよすぎて拗らせ死にそうとかいろいろあるんだけどキリがないのであとはTwitterで。いや重岡くんについてちょっと言及しておくと、かっこいいのは知ってたんだけど、なんか失礼ながら思っていたより演技が上手くてびっくりしたというか…今回の火賀役って方向性は基本的に溺れるナイフの大友と同じじゃないですか。報われないいい奴っていう。でも実際見てみたら全然大友ではなかった。そして(これは見た人の解釈によると思うけど)重岡くんでも全然なかった、ようにわたしには見えた。それが嬉しい誤算というか、今後が楽しみだなあと思いました。これはわたしの勝手な推測なので外れていたら大笑いしてもらって構わないんですけど、何となく、これが重岡くんの最後の高校生役になるんじゃないかと思う。一番まっすぐで一番きらきらしていた火賀くんの涙でエンドロールが流れた美しさを忘れないでいたい。